クラウドではじめるデータマネジメント

第16回

自社に最適なデータ活用アプローチを選択。
現場力が強い日本企業ではミドルアップダウンが主流

自社に最適なデータ活用アプローチを選択。現場力が強い日本企業ではミドルアップダウンが主流

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本コンテンツは、当社が執筆している日経クロステック記事「実践DX、クラウドで始めるデータマネジメント 第20回「データ活用のアプローチ、トップダウンとボトムアップそれぞれの進め方」の内容を一部要約しつつ独自コンテンツを加えたものです。日経クロステック記事の全文はこちらをご覧ください。

この記事では、データ活用におけるトップダウンとボトムアップの両アプローチの特徴や利点について説明します。欧米では、経営層主導で課題や目標を初期に定義するトップダウンアプローチが基本です。これに対し、現場力が強い日本企業で主流の、ボトムアップアプローチから成果を出し、経営層の支持を得ながら徐々に大きくしていく、バランスのとれたデータ活用プロセスに焦点を当てて解説します。

データ活用のアプローチ方法 ー トップダウンとボトムアップ

トップダウンアプローチのメリットと成功の要件

データ活用における「トップダウンアプローチ」とは、経営層が明確な課題や目標を設定し、それに基づいてデータサイエンティストやデータエンジニアなどの専門家がデータ分析で解決策を導出する方法です。このアプローチは、組織全体の大きな変革を経営層の強い指導のもと迅速に進めることができるため、多くのメリットがあります。

トップダウンアプローチのメリットには次のようなものがあります。

大規模な変革を実現

経営層の指示により、部門の枠を超えた大胆な業務プロセスやビジネスモデルの変革が可能になります。また、変革を実行するための予算確保が比較的容易になります。

実施のスピード向上

組織の上層部が直接関与することで、部門間の調整が迅速に行われ、プロジェクトの進行スピードが向上します。

トップダウンアプローチでは、必要となるさまざまなリソースの確保が容易であり、不足する人材を外部から補うという選択肢も含まれます。しかし、成功には経営層がデータ分析に関する十分な知識を持つことが重要です。経営層がデータに基づいた意思決定に不慣れであったり、データ分析技術の最新の進展を理解していない場合、適切な課題設定が難しくなり、プロジェクトの成果を出せずに終わるリスクが高まります。

このアプローチを取る際は、経営層のデータに関する知識と理解を深めること、そして組織内でのデータリテラシーの向上を目指すことが、成功の鍵を握ります。

ボトムアップアプローチのメリットと課題

「ボトムアップアプローチ」では、中間管理職や一般社員が自らの日常業務から課題を見つけ、その解決策をデータを活用して探索します。本アプローチでは、小規模で予算が少ない施策は部門内で迅速に実行可能ですが、部門を越える大規模な変革や大きな予算を要するプロジェクトは経営層の承認が必要になるため、進行が滞る可能性があります。

ボトムアップアプローチのメリットには次のようなものがあります。

現実に即した課題設定

現場の社員が直面している問題から課題を発見するため、非現実的な目標設定のリスクが低くなります。しかし、このアプローチは現状の問題解決に重点を置きがちであり、根本的なビジネスモデル変革を促すような革新的なアイデアが生まれにくい側面もあります。

主体性と自律性の促進

社員自身が課題を見つけ、解決策を提案することで主体性が育まれます。また、変化に迅速に対応し、自律的に行動できる組織の構築という点にも寄与します。

日本の多くの企業では、強い現場力が競争力の源泉となっています。ボトムアップアプローチはこの強みを活かす絶好の方法であり、小さな改善を積み重ねて効果を挙げることが期待されます。

しかし、ボトムアップだけでは組織全体の変革を実現するのは難しいため、ボトムアップの利点を生かしながら、トップダウンのアプローチを組み合わせて、より大きな変革を目指す戦略が求められます。これにより、現場の実情に基づいた課題解決と、組織全体の目指すべき方向性の両方をバランス良く推進することが可能になります。

ボトムアップの成果から経営層の指示を得て進める「ミドルアップダウン」

トップダウンアプローチの導入が難しい状況では、ボトムアップアプローチから始めて徐々に推進することが1つの現実解になります。この場合、現場レベルで目標や課題を特定し、その後、経営層と密接にコミュニケーションを取りながらプロセスを進めることが重要です。

データサイエンスの分野では、データに基づいて洞察を得たものの、それがビジネスに活かされない事例がしばしばあります。これは、組織がデータに基づく意思決定に慣れていない場合、意思決定者の経験則に反するデータは受け入れがたく、採用されにくいためです。データ分析を担当する方は、意思決定者との間で、どの領域で意思決定をデータで補強したり、新たな知見を得たりしたいかを共有すると、意味のある分析テーマを設定しやすくなります。

データ分析による成果が部門内での改善を超えて、経営層の支持を得られるようになると、他部門への展開や組織全体の横断的変革へと進めやすくなります。このようなアプローチは、中間層が主導権を握る形で進められることが多いことから「ミドルアップダウン」とも呼ばれます。

「ミドルアップダウン」は日本の企業でよく見られるアプローチで、当社の支援先企業でも成果を得ている例がいくつもあります。この場合も、ミドルの知見やアイデアを生かすトップの存在が重要であり、データ活用でのビジネス変革においてトップの役割が非常に大きいことには変わりがありません。

日経クロステック記事では、パブリッククラウドサービスを活用したボトムアップ・アプローチに適した基盤構成方法についても説明しています。ご興味のある方はご覧いただければと思います。

次回のテーマは「データベース信頼性エンジニアリング(DBRE)」です。データ活用のアジリティを上げる際にはデータ基盤の運用が変革します。従来の運用とは概念が大きく異なるDBREについて、その必要性と意義を説明します。

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